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トランプ大統領 排出権市場をどこまで揺さぶるか?リスクと展望  

  • 執筆者の写真: 楠本夏花 0411
    楠本夏花 0411
  • 5月10日
  • 読了時間: 3分


  2025年4月8日、トランプ政権は「州による過剰な規制から米国エネルギーを守る」と題した大統領令を発表しました。この大統領令は、カリフォルニア州の排出権取引プログラム(Cap-and-Trade)を含む州の気候変動対策を標的としており、連邦政府がこれらの州法を違憲または連邦法により無効と主張する可能性があるとして、市場関係者や専門家の間で話題を呼んでいます。 

 

 私たちブリックレイヤーアセットマネジメントは、カリフォルニア州の排出権取引プログラムに関する法的専門家のNicholas Van Aelstyn(ニコラス・ヴァン・アールスティン)氏に、今後のリスクや市場への影響についてお話を伺いました。  

 

法的措置への懸念とその実際のリスク  

 Nicholas氏によると、今後、「カリフォルニア州の排出権取引プログラムが州を越えた卸電力市場に介入しており、連邦電力法(Federal Power Act)に基づき連邦エネルギー規制委員会(FERC)が管轄する事項を侵害している」と指摘してくる可能性があるそうです。そのため、来月7日までに連邦政府が法的措置を取る可能性があるとのこと。 しかし、Nicholas氏は、たとえ訴訟が起こされても、排出権取引プログラムが即座に廃止されるリスクは低いと考えています。 

 特に電力セクターは、排出権市場全体の15%未満を占めるに過ぎず、訴訟によって介入が違法と判断されたとしても、市場全体が完全停止する必要はないと指摘しています。  

 

市場への影響と対応策  

 もし訴訟により一部の規制が違法と判断された場合でも、カリフォルニア州大気資源委員会(CARB)は行政的措置をとり、電力市場を排出権取引から除外するなどの調整を迅速に実施できるとされています。これにより市場の継続性への大きな影響は避けられる見込みです。 

 またNicholas氏は、「連邦電力法以外にも、Equal Sovereignty Doctrine(平等主権の法理)やDormant Commerce Clause(休眠通商条項)などの法律にも違反しているとの指摘があるが、これらが訴訟に至る可能性は極めて低く、訴訟が成功する確率も低いため、市場廃止には至らないだろう」と述べています。 

 

今後の市場展望と投資家の対応  

 トランプ政権の動向は排出権取引市場に一時的な不確実性をもたらし、一時的な価格下落を招いています。しかし、専門家の多くは市場そのものが破壊されるほどの影響を受けるとは予想していません。市場価格は長期的に上昇する可能性が高いと見ています。 企業や投資家は、こうしたリスクを理解しつつも、短期的な変動に惑わされず、長期的視点での冷静な判断と計画を進めるべきでしょう。 トランプ政権による今回の動きが、市場にどれほどの実質的な影響を与えるかはまだ見通せませんが、市場関係者には冷静な対応が求められています。 

 

*Nicholas W. Van Aelstyn(ニコラス・ヴァン・アールスティン)氏は、Sheppard Mullin Richter & Hampton LLPのサンフランシスコオフィスに所属するパートナーであり、同事務所のESGおよびサステナビリティチームのリーダーを務めています。彼は不動産、エネルギー、土地利用、環境法の分野で25年以上の経験を持ち、特にカリフォルニア州の排出権取引プログラムやAB 32に関連する気候変動法制に精通しています。また、気候関連の開示要件や再生可能エネルギー開発プロジェクトに関する環境デューデリジェンスなど、幅広い分野でクライアントを支援しています。


 ※本記事の法的見解や予測は、今後の訴訟や政策の動向によって変化する可能性があります。最新の状況については継続的な情報収集と専門家への相談を推奨します。 

 

 
 
 

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